ひげ爺の今は〇〇となりにけり。

初期の老々介護日誌から、思い出の記、艶笑小咄、別サイトで歴史情話など掲載

2021年6月のブログ記事

  • だから、この追悼文集を妻の霊前に

    2021.06.30 妻の身の回り品を整理していると、書棚の下段の物入れの中に、思いがけないものを見つけた。 36歳で亡くなった、文学同人仲間のS君の、13回忌追悼文集だった。 S君は自分の三歳年下で、引っ越しの手伝いに来てもらったり、子供ができたばかりの我が家に遊びに来て、赤ん坊をあやしたりして... 続きをみる

  • 美しい国、ニッポン、ヤポネーは

    2021.06.29 昨日は奇妙な体験をした。 ここのところ、眠りが浅く、2、3時間の睡眠しか保てない。 寝た、起きた、を繰り返すので、いつも頭に靄がかかっている。 昼間、サテライト事務所に妻の年金停止手続きに行き、前日、すべての必要書類を揃えていたのを確認したはずなのに、いざ提出の段になって一枚... 続きをみる

  • 『白鯨』モビィ・ディックに立ち向かう、エイハブ船長のような

    2021.06.28 近鉄大阪線河内山本駅まで迎えに来てくれた楊玉新は、大型車の白いマツダルーチェに乗って、どこか安堵の、にこにこ顔で、手を振って待っていた。 そこまでに、ご両親の様子はあらまし手紙で聞いていて、 それでも挨拶にやって来る相手の男を、むげに追い払うものではない。 自分は、巨大な『白... 続きをみる

  • 先の事を考えて、急ぐものでもなかった

    2021.06.25 当時の自分は、フーテンの寅さん、のようなものだった。 先に自分が退院して、通院日でもないのに、歩いて数分だから、つい顔を出す。 診療所内の時間配分は分かっている、今頃はいちばん皆が退屈しているだろう時刻に、手土産も無しに、ふらりと立ち寄る。 「トラ屋」の店先を、ちょろちょろ行... 続きをみる

  • 傘は持っていないが、いずれ止む、通り雨だ。

    2021.06.24 昨日は朝の用事を済ませると、仏壇のはせがわに名前通りの仏具を求めに出かけた。 朝の用事とは、主に洗濯と掃除かけの二点、 家を空けるときは、火の回りを特に注意している。 ガスを最小の火にしたまま、うっかり忘れて、薬缶も鍋もフライパンも底にやけどの痕をつけてしまったことがある。 ... 続きをみる

  • 妻がそれを、微笑んで、見つめている

    2021.06.23 飛蚊症というものに、ここ4、5年、気を煩っている。 眼の前に、小さな黒い影がちらちら飛んで見える、あの症状です。 幻覚ではなく、実際に眼球を動かしていると、くっきりとそこに黒い影が浮かんでいるのが見える。 気になり出すと、いつまでも消えずに残っているが、他事に集中していると、... 続きをみる

  • 雀百まで、 灰になるまで、

    2021.06.22 昨夜10時直前に、風呂上りに見たNHK番組、名前をメモしていた。 亀山耕平、32歳、オリンピックを目指している体操選手らしい。 ちょうど、あん馬から落ちる映像が流されていたので、当落線上にない、メダルに届かぬ選手の苦闘を追っていた。 その亀山選手の言葉、 「どうして体操をして... 続きをみる

  • 世間知らずはお目出度い、自分の方だった。

    2021.06.21 20代の半ば、四国遍路横峯寺から石鎚山に登り、疲労困憊して家に帰り、死んだようになって横たわっていた。 「白目が黄色になっている」と指摘されて、倉敷の市民病院の診察を受けると、即刻、急性肝炎でその日のうちに入院、体中が黄疸で着ている寝巻がまっ黄色になった。 大人数の囲いも無い... 続きをみる

  • そう考えて、朝夕の線香を欠かさないでいる

    2021.06.20 小川洋子の「博士の愛した数式」を読んでいる。 いつどんな場合でも、博士が私たちに求めるのは正解だけではなかった。 何も答えられずに黙りこくってしまうより、苦し紛れに突拍子もない間違いを犯した時の方が、むしろ喜んだ。 そこから元々の問題をしのぐ新たな問題が発生すると、尚一層喜ん... 続きをみる

  • 人の営為など知りません、ジュエに救われている

    2021.06.19 いろんな用事・雑務に追われている。 その中に、役所の手続きというものがある。 これは残された者から、故人を想う時間を省いて、他の事に振り向けさせる、意外な妙法であるのかもしれない。 24時間、亡き者のことを想って、崩れていけるものでもない。 通夜、二日、三日と経ち、早や、初七... 続きをみる

  • 離れたところから二人のベクトルが交差した

    2021.06.18 汗を掻きながら、くたくたに一心に歩いたことで、頭の中に目的物以外の何も消えていた。 40年前の記憶しか残っていない。 yahoo地図を印刷して、テーブルの上に置いていたA4用紙を持ってくるのを忘れた、が、武蔵小金井駅からの方角は分かっている。 駅を背に、北北西に進路をとれ、だ... 続きをみる

  • 妻ロスの、悼みだろう

    2021.06.17 パソコンに向かって頭を使うのもいいが、それだけだと心身に滞りができる。 月曜日に打ったコロナワクチン接種のせいか、左肩に少々のコリがあった。 それを押して、病院に妻の残留物を引き取りに行ったので、思惟にムリをさせてしまった。 きのうは終日、ぼんやりとしていた。 妻のことだけを... 続きをみる

  • 妻の荷物の引き取り

    2021.06.16  月曜日は1回目のコロナワクチン接種に、駅向こうの指定医院まで出かけた。 火曜日は大学病院に、5月分の入院費の支払いと、そのままになっていた妻の荷物の引き取りに行った。 いったんは持ち帰っていた、車いすと酸素ボンベを、妻の強い要望で、半ば呆れながらもいずれは必要になるのだから... 続きをみる

  • 先立たれた男の供養はそれしか思いつかない

    2021.06.15 格別、信心深い男ではない。 若いときは、無神論・無宗教、自力こそ尊い、他力などに頼るものか、の気概があった。 それを、不自由にも窮屈にも感じない、鈍感さを粋がっていた。 それもどうやら、様変わりの、心境になったようだ。 ふと、妻は何も食べなくても平気なのか、入院中は差し入れも... 続きをみる

  • 涙雨ならぬ洗雨が降っていた

    2021.06.14 式が終えて外に出ると、涙雨ならぬ洗雨が降っていた。 葬儀は市営斎場で行った。 子供たちと一緒にタクシーに乗り、時間前にかなり早く着くと、すでに大阪の兄弟たちは全員そろって待っていた。 皆、後期高齢者になるが、肉体的に自由業で鍛えているせいか、酒・ゴルフと闊達な人たちだ。 82... 続きをみる

  • おくやみの言葉を戴いたこと、一生忘れません

    2021.06.12  深夜に、病院の霊安室から自宅に連れて帰り、一日、お通夜です。 子供たちと心行くまで、静かに寝ている妻を見送りました。 葬儀などというものを行うつもりはなくても、亡き者には安心してあの世に旅立ってもらわなければならない。 妻の兄弟から供花を贈られ、それを飾ったので、枕辺が華や... 続きをみる

  • 旅立ち

    わが愛する妻、知寿、チズさん、 悲しくも、6月10日22時22分 不帰の人となりました。 75年の苦闘の生涯でした。 しばらく気持ちの整理がつくまで、ブログはお休みします。 皆さま、読者ありがとうございました!

  • 抜けるような青空には、突然の夕立の予感

    2021.06.10 月曜日に術後の説明を受けたばかりなのに、水曜日も夕方、整形の医師から電話があった。 ――熱が9度近くあり、呼吸も少し荒い、元々、肺炎が底に残っているので、また出てきている、痰を取り除いて、抗生物質を変えてみます― そのような電話を貰ったのは初めてのような気がする。 2年前の左... 続きをみる

  • 遊びをせんとや生まれけむ

    2021.06.09 遊びをせんとや生まれけむ、中世に流行った今様の謡いです。 中高の頃の、歴史か古典かで学んだ記憶があります。 テレビでもやっていた。 松山ケンイチの清盛 松田翔太の後白河天皇 伊東四朗の白河法皇、 どちらかといえば、年齢的にも顔相的にも、伊東法皇になる。 貴族の真似をしようと考... 続きをみる

  • 電脳に人脳が勝った!

    2021.06.08 何か気分に、まったく色艶がなくなってしまった。 老人性うつに、罹ってしまったのかもしれない。 張り合いが無い、やり甲斐も無い。 白々しく、空々しい、毎日になってしまった。 そんな中で、何かに噛みつく材料はないかと探していたら、有った。 考えれば、その日から、変調になっている。... 続きをみる

  • 何か遺そうと立派な装丁の自費本を10冊ほど印刷

    2021.06.07 昨夜は妻から5日ぶりの電話があった。 側で看護士が手助けしているようで、はさむ声も聞こえた。 こちらから電話するのは、まだ早いと手控えていた。 アプト手術した日の次の火曜日にかかってきた電話では、何を話しているのか要領を得なかった。 アプトに覚醒して、うろたえているというので... 続きをみる

  • 頭が疲れているので、ロクなことしか思い浮かばない

    2021.06.06 朝一番に、昨日のブログの修正削除をした。 時間をかけて、一人一人重複しないように書いたものが、一瞬に掻き消されたのには、やはり力が抜けた。 代わりに添えた文章は、俵長者とかネズミの恩返しとかの童話の原型であったように記憶しているが、ウロ覚えのまま書いたので信頼はおけない。 内... 続きをみる

  • 多種多様のブログが、すべて無料で読める

    2021.06.05 昨日は雨で、退屈な金曜日(毎日が日曜日)していたら、みんな読み応えあるブログばかりで楽しかった。 おかげで、屈託もなく、心の洗濯ができた。 あくまで文を主としている、読者登録の方たちのみ、昨日一日の記事にしぼったので、洩れた方はあしからず、時系列順に並べた、ファン感想文です。... 続きをみる

  • 夫婦は、元は他人だが、長年培って、兄弟よりも濃い関係

    2021.06.04 宅急便でメロンが届けられて、困ったことになった。 大阪の妻の姉から、時候の挨拶で送られてきたものである。 口にしなくても美味しい、メロンをもらって、困ったはないが、しかし、弱った。 お礼の電話をしなければならない。 妻のことを話題にしないわけにはいかない。 「スーの状態はどう... 続きをみる

  • 「鏡の中の、某」

    2021.06.03 4年ほど前の創作ノートが、パソコンに残っていた。 それを読むと、あれこれ周辺の整理もついたそのころから、本気で余生を創作に捧げようとしていたのがわかる。 自分の出発点、モチーフであるので、この場を借りて老爺の道しるべとしたい。 誰にでも大なり小なり有る、虎か馬か、と素直に言わ... 続きをみる

  • 家族のために生き延びるアプトを選んだ

    2021.06.02 自分の事ではないから、その時の感想があるわけではない。 歯の抜歯で、歯肉に麻酔をかけられた、針を刺されたチクリとした痛みと、周辺のしびれの感覚は残っている。 それのもっと大きな感覚だろうか。 全身麻酔ではない。 半身麻酔と聞いている。 アプトamputa切断の痛みは感じないだ... 続きをみる

  • ヨカッタ、ヨカッタ、の一日

    2021.06.01 何はなくとも、まずは一献、 杯を頭上に掲げて、オメデトウゴザイマス、ヨカッタ、ヨカッタ、と唱えてやりたい。 1時過ぎに9F病棟に着き、2時15分に病室を出て4Fの手術室に向かい、その入り口で別れて、いつでも電話のつながるようにして病院内で待機すること暫し。 2時間も経て、そろ... 続きをみる