ひげ爺の今は〇〇となりにけり。

初期の老々介護日誌から、思い出の記、艶笑小咄、別サイトで歴史情話など掲載

かたじけなさに涙こぼるる

2022.10.29
自転車で買い物に行く途中に小学校の前を通る。
今日、運動会の日だった。
校庭の中、道路側の柵の金網越しにも、大勢の父兄、じじばばたちが鈴なりで囲んで、
子供たちの走る、投げるに、歓声を上げていた。
自分の子供たちも、そこで、40年近く前に、躍動していた。
妻とももちろん応援に行っていた。


自転車で眺めながら通り過ぎる、そのとき湧き上がる思いがあった。
かたじけなさに涙こぼるる。
家に帰って、誰の歌であったか調べて、さらに合点した。


西行
なにごとのおはしますか知らねども かたじけなさに涙こぼるる


これは伊勢参りをした折の歌らしいが、伊勢でなくてもどこでもいい。
歳をとると、どんな景色を見ても、そのように感じるときがある。
かたじけなさに涙こぼるる。


西行の歌をもう一つ、
ねがわくは花のしたにて春死なむ そのきさらぎの望月のころ


享年73歳、西行は旅立った。
自分はまだ死ぬわけにはいかない、
ねがわくは桜花咲く春とならん、でありますように、と思う。