ひげ爺の今は〇〇となりにけり。

初期の老々介護日誌から、思い出の記、艶笑小咄、別サイトで歴史情話など掲載

アニマルセラピー、という言葉がある

2021.02.27 突然に家族がふたつ、増えた。
二年ほど前、母親の見舞いに帰って来たときに連れて来ていたが、この度は妻には初めての顔合わせになる。
犬用のリュックがあるらしく、申告すれば新幹線にも無料だったか、500円か1000円で乗り込めることができると以前聞いた覚えがある。
ジュエ、と呼んでいる。
チワワとミニチュアダックのハーフの小型雌犬だ。
ジュエは、当時同棲していた彼女が喧嘩別れして去って行くときに、残して行ったものらしい。
小さな店から二人で始めると話していた、その約束を破って、大きな店に飛びついた長男に、ついて行けなくなり、形見に残して行った。
ジュエという名前からして、長男が考え付いたとも思えない。
数年は彼女も一緒に店の手伝いをしていたが、お互いに理解せぬままに、去っていった。
そのカノに未練があるようでもないが、以来、ずっと長男が飼っている。
11歳になる、老犬だ。
我が家も昔、二度、犬を飼っていた。
現在の家に住む前に、子供たちがまだ小さかった頃、近所の知り合いから子犬をもらって飼い始めた。
妹がモクと名付けた小型の雌犬で、狭い庭の片隅に小屋を買って来てそこで飼った。
長く生きず、4、5年で死んだ。
長男が小学二年生のとき、学校帰りについて来た子犬がおり、次の日、学校に連れていき、クラスの同級生や先生に心当たりを探してもらって、結局長男に懐いているということで、そのまま押し付けられた形で、家で飼うことにした。
モクがまだ生きていたころで、それでチビと名付けた。
えらく足の太い仔犬だと思っていたら、見る間に大型のシェパード犬に育った。
雑種だが、見た目はシェパードそのままに見える。
ブロック塀の上に身を乗り出して、通行人を驚かせていた。
今の家に引っ越して、ゆったりとした犬小屋を与えられて、拾い犬は大往生した。
「ジュエ、ジュエ!」と呼んで、妻はかすれ声で、嬉しそうに声を出している。
アニマルセラピー、という言葉がある。
妻を見ていると、二人きりの暮らしに新たな家族がふえて、喜んでいるのがわかる。