ひげ爺の今は〇〇となりにけり。

初期の老々介護日誌から、思い出の記、艶笑小咄、別サイトで歴史情話など掲載

臆病なジュエを可愛く思って

2021.03.14 朝からのショボ雨が午後から本降りとなり、そのうちゴロピカの春雷まで轟き始めて、にぎやかな一日になった。
長男にくっついて来たジュエは、もうすっかりこの家の一員になって、階下に下りて一緒に過ごしている時は「ジュエ、ジュエちゃん」と妻の目を細めさせている。
ただ、車いすに乗っている妻の姿には、動物なりに何か異な感じがしているのか、不思議そうな目をして、側には来るが、心に一定の距離を保っているようだ。
食事時に、与えても良いと長男が話した、味付けしていない肉片やキャベツ・レタスなどの切れ端を妻が差し出して食べさせようとするのだが、手が伸ばせないのでジュエの口元まで届かない。
ジュエも欲しがって「ワン」とも吠えない。
そこで引き継ぎ、
「ほら、ママからの贈り物だ」と手渡すと、咥えて丸いマットの上に乗って、そこで食べている。
初めは「お婆さんから」と呼んで、「失礼です」と言われたので、「ママ」になった。
そこのあたりは妻もしっかりしている。
午後から、階上で何かにぶつかったり走ったりしている物音がするので、様子を確かめに上がると、
「ジュエはカミナリが嫌いなんだ。腹がゆるんで、もう二回もウンチしている」と言う。
テレビを大きな音量でつけているので、それほどまで雷鳴に気づかなかったが、たしかに戸外は大変な荒れようになっている。
人間にも理解不能なところがある天変地異には、動物のジュエには驚天動地の現象でもあるのだろう。
飼い犬や猫が妙に落ち着かない、野鳥がいっせいに空に飛び立った、川の鯉が姿を消した、などの尋常ではない様子に、列島大地震の予兆を感じる時が来るかもしれない。
それまでは臆病なジュエを可愛く思ってやろう。
妻にそう話して、二人で笑った。


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