ひげ爺の今は〇〇となりにけり。

初期の老々介護日誌から、思い出の記、艶笑小咄、別サイトで歴史情話など掲載

口から悪霊が飛び出して来る

2021.01.31 朝一番のうがいの後、爽健美茶を飲んでいる時、大きく咳き込んだと思ったら、実に大きな痰のかたまりを吐き出した。
大げさに言えば、ホラー映画で口から悪霊が飛び出して来る、そんな瞬間を見た思いだった。
痰は四六時中からんでいて、ゲエッゲエッと云いながら出そうとして中々うまく吐き出せないのだが、この時は気持ちいいほど大量の痰のかたまりが出た。
そのせいか、しばらく安穏な表情になっていた。
大学病院を退院するとき、看護師から痰の吸引のやり方を教わり、吸引器も揃えていたのだが、細長い管を喉に差し込んで吸い出すのは喉の粘膜を傷つけないかと心配しながら行うので、中々素人には難しい。
ひと月も努力してみたがかえって体力を弱らせるみたいで止めた。
以来、自力でゲエッゲエッと云いながら出している。
俗にいう、肺に水が溜まって、徐々に呼吸が困難になる。
画像を見せられ、肺が真っ白になっている、それを三度ほど繰り返して最後に退院して今日まで不思議なほど長く、1年以上も自宅療養で済んでいる。
最初に病院に緊急配送された折、icu室で太い管を喉から差し込まれて暴れないように手首を縛られている妻を見たときには、医師から言われずとも、助からないのかも知れないと覚悟した。
それをその後1年のうちに三回も繰り返して、すっかり慣れっこになってしまった。
褥瘡で片足を膝から下を切り落とさなければ治らないと告げられても、それほどのショックにも感じなくなっていた。
片足が失くなったこと、リュウマチで永年苦しんできたこと、どんどん言葉が出なくなったこと、それらの悪霊をついに吐き出したかのような大きな痰のかたまりだった。


正岡子規に、糸瓜咲て痰のつまりし仏かな、がある。
明日から新しい月、2月になる。
庭の片隅にヘチマの苗を買って来て植えてやろうかと思う。
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