ひげ爺の今は〇〇となりにけり。

初期の老々介護日誌から、思い出の記、艶笑小咄、別サイトで歴史情話など掲載

そして、妻が居なくなった!

2021.04.08 朝一番に、点滴を外しに看護士がやって来て、着替えを済ませて介護タクシーを呼び、予約なし診療で大学病院に向かった。
在宅クリニックの医師の紹介状が効いたのか、受付を済ませて3階の皮膚科に行くと、すでにボードに番号が掲示されている。
そこから、血液検査、エコー検査に回されて、再度皮膚科に戻り、入院が決まった。
処置室で、熱を測ると38.5度も出ている。
朝はいつもより高めだったが、37度だった。
「足から来ているのでしょう」と看護士が言う。
コロナ検査で、試験官に唾を吐き出すのだが、それがうまくできない。
口の内がカラカラに乾燥しているのだ。
それでも幾度が繰り返して、必要量は出た。
そこから又、血液検査、心電図、レントゲン、と入院のための検査に回った。
ようやく終えて、元の処置室に帰ると、
「レントゲンがうまく撮れてない、済みませんがもう一度……」
妻は一人でレントゲン板に張り付けない。
車いすから背凭れのない丸椅子に移動させるだけでも大変だ。
身体には酸素管と尿管がからむように着いている。
介添え者はレントゲン室には入れないと思っていたら、重い(鉛?)ベストのようなものを着せられて、横から妻を支えた。
やっとの想いで帰って見ると、
「レントゲンがうまく撮れてない、済みませんがもう一度……」
と言われてムカッとした。
マスクをしているが、目にその表情が現われたのか、看護士は恐縮しきりだった。
再び、レントゲン、順番待ちをするまでもなく、先刻の技師が出て来て、今度はうまくできた。
入院手続き、説明が有り、この大学病院にはここ4、5年の間に数えてもう6回も入院している。
すべて仔細は承知している。
二週間ほどの点滴治療のはずだが、あくまでそれは現在の予定、
病棟室内には入れない、廊下で二人の担当医師(両名とも若い美人女医だった)から足の血流がうまく流れていないと説明されて、血管拡張の手術になるかもしれない、万一の心臓マッサージの際にろっ骨が折れて心臓に突き刺さる心配まで話されて、最初の時は驚いたが回を重ねてそんな脅しには乗らない、入院慣れがある。
「大丈夫です。すべてお任せします」
家庭での介護・看護・入浴の様子を話し、日常的に使いなれているスプーン・フォーク、など必需品を明日持ってくると話して、レッドゾーンになっている携帯酸素ボンベを持ち帰るためにタクシーに乗って家に帰ると夕方5時を回っていた。
「二人とも急に姿が見えなくなったので、ジュエが落ち着かずに動き回っていた」
と長男が言うと、ジュエも「ワン」と吠える。
そしてそのあと、妻がしばらく居ない、ことを知る。