ひげ爺の今は〇〇となりにけり。

初期の老々介護日誌から、思い出の記、艶笑小咄、別サイトで歴史情話など掲載

妻がそれを、微笑んで、見つめている

2021.06.23
飛蚊症というものに、ここ4、5年、気を煩っている。
眼の前に、小さな黒い影がちらちら飛んで見える、あの症状です。
幻覚ではなく、実際に眼球を動かしていると、くっきりとそこに黒い影が浮かんでいるのが見える。
気になり出すと、いつまでも消えずに残っているが、他事に集中していると、有ることさえ忘れてしまって、特別に日常生活に影響するものでもない。


妻に勧められて、以前、眼科で検査してもらったが「特に心配はありません」との判定で、経年老化の一つ、くらいに思われたのだろう。
最近はパソコンの前に座る時間がふえて、目に疲れを感じるようになった。
かすみ目で、時々、字がぼやける。
ひどい状態になっているような気がするが、失明の恐れはない、と構えるしかない。
医師もそのように話していた。


自然界にも、蚊が飛び出す季節になった。
ここ数十年、妻は蚊を殺したことは一度もない。
ぼよーんと目の前を蚊が飛んでも、それを両手でパチンと叩くことはない。
腕や頬に蚊が止まっていても、それを一方の手で叩き潰すこともない。
スローモーに手を振るったのでは、蚊も余裕で逃げていく。
自分がそれを追いかけて、妻の仇を取る。
時には、妻の腕や頬を強くパチンして、さすがに謝ることになる。
「やったな!」とは言わないが、微妙な表情であるのは、言を持たない。
今夏は、金鳥の蚊取りを出さなくても、日本香堂の線香がくゆっているので、蚊も出て来ないだろう。
妻がそれを、微笑んで、見つめているような気がする。


写真は、わが家の招来神ジュエ