ひげ爺の今は〇〇となりにけり。

初期の老々介護日誌から、思い出の記、艶笑小咄、別サイトで歴史情話など掲載

身も心も虫干しの一日

2021.02.22 あまりの好天に、庭の鉢植えの土返し、水槽の金魚の苔取り・フィルター交換に気を散じることにした。
介護タクシーに乗る時に、玄関先に設置している彩りの小花がどれもみすぼらしくなっており、妻にそれを指摘されて、パンジーなど新たに6株購入した。
植木や草花は妻の趣味だったが、年経るにつれて夫にもその趣味は引き継がれた。
車庫地に、ブルーシートを敷き、その上に鉢の土をどんどん引っくり返して、平スコで混ぜて日光干しする。
トマト、ナス、キュウリなどの鉢は大きく、重くてそのまま運ぶことができない。
スコップで底に当たるほどまで空にして、やっと抱えることができるようになる。
妻を移動する力はあるのだから、瞬間に大鉢を持ち上げることはできる。
しかし、たぶん腰を痛める。
何も無理して、手力男命の力自慢を見せることはない。
時間を置いては、土をひっくり返して、日光の恵みを与える。
それほどに今日の日差しは色濃いものだった。
小さな庭だが、家庭菜園の真似事をして、花や野菜や木々に囲まれるのは、精神衛生上、いいことだ。
リビングの出窓に置いてある金魚鉢も、いつのまにか内が見えないほどガラス面に苔がびっしりこびりついている。
それをナイフで削り取り、フィルターも水草も交換すると、観賞用の金魚たちが浮かび上がってきた。
「きれい」と妻が喜ぶのも納得のピカピカの水槽になった。
特別に何が増えたわけでもないが、身も心も虫干しされた、新たな気持ちが醸成されたのには違いない。
それを幸せの一刻と呼ぶことができなくもない、青天の或る日の昼下がりだった。


都之隠士の世界

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